法定相続分で分割しようというときに争点になりやすいのが、特別受益と寄与分です。
実際のケースでは、長兄の方が、親御さんが亡くなる何年も前から献身的に介護をしてきたので、「寄与分が認められるべきである。」という主張と、ほかの兄弟の方たちからは、「長兄はコストの高い私立の医科大学を出してもらってインターン中の生活費も親から援助されていたので、それを特別受益分として相続から差し引くべきである。」という主張がぶつかり合う遺産分割の事件がありました。
もちろん、それぞれの相続人の方の主張が、遺産分割協議のなかでその分を考慮した内容で合意が得られればトラブルにはなりませんが、最終的に主張が食い違ってしまうと、調停、裁判へと進むことになります。
上記の私が担当した事例では、介護の寄与分に対する主張が食い違って裁判になり、判決まで3年以上かかりました。
その判決では「親が子の面倒を見るのは当たり前、子が親の介護をするのは当たり前」という考え方で、介護をしてきた長兄の主張を認めず、法定相続分での分割をするようにという判決が出ました。
一般的に、寄与分については、皆様がお考えになっているほど認められず、たとえば家業を長兄が無償で手伝っていた場合や、農家の作業を手伝っていた場合などのケースでは認められやすいのですが、介護などの面倒をみることでは認められにくいようです。
特別受益についても、進学にお金を使うのは親として当たり前であるという考え方ですので、私立の医学部に進んだからといって多大な特別受益分が認められるかというと、そうではないというのが裁判所の考え方の傾向です。