【事件】
奥さんが妊娠して臨月を迎えたときに実家で出産したいということで、遠方の実家に里帰りした。
実家のほうが安全だし初産だからということで、旦那さんも実家で出産することを認めた。
無事出産して肥立ちも悪くなさそうなので、奥さんに連絡して、子どもの顔も見たいので帰ってきてくださいという話をしたら、突然、奥さんが「あなたとは、これ以上暮らせない」と言ってきた。
男性は、病気のため仕事を休職中であった。
奥さんに「帰ってきてください」という説得を始めたところ、奥さんが、夫婦の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚の調停を申し立てた。

【特長】
このケースは、男性の側に特に離婚事由がないのに、離婚を迫られています。
むしろ女性の側に不当な別居を行っている「悪意の遺棄」にあたる行為があるとも見られます。

【結果】
奥さん側は、もともと調停で話し合う気がなく、すぐに調停を切り上げて裁判に進みました。
奥さんの実家の管轄の家裁で、離婚の裁判が始まりました。
このケースでは、旦那さんに不貞もなければ、悪意の遺棄もなければ、精神病もないのですが、婚姻関係を継続しがたい重大な理由ということを相手は主張して、最終的には裁判所の和解案を受け入れる形で終結しました。
両者は離婚を認め、乳児なので子どもの親権は女性の側にいくという条件のほかは何も取り決めないという条件での和解になりました。もちろん、養育費も支払わないし財産分与もありません。
男性側が慰謝料を求めましたが裁判所の和解案では認められませんでした。

【所見】
この訴訟の場合は、男性の側が、譲歩をして和解を受け入れる形で解決しました。
男性の側としては、いきなり離婚を切り出されるとは夢にも思っていなかったでしょう。
女性にしてみれば、病気のために休職してしまっていることも含めて、婚姻を続けることができないと考えたのでしょう。
このような、気持ちや考え方のすれ違いもあるということです。